がんになると、治療による副作用で食事量が低下したり骨髄抑制(※1)が起きたりして貧血症状が見られやすくなります。
「貧血が起きたときの治療や対策が知りたい」「貧血にはどんな食べ物が効く?」と気になっている方もいらっしゃるでしょう。
当記事では、貧血の原因や見られやすい症状、治療法についてまとめるとともに、対処法やおすすめの食事を紹介します。がん治療を受けている方は、ぜひ参考にしてください。
(※1)骨髄抑制とは、骨髄で赤血球などの血液細胞を生成する能力が低下すること。
貧血とは、赤血球の中にあるヘモグロビンの濃度が低下した状態を言います。ヘモグロビンは酸素とつながることで、身体の隅々まで酸素を運ぶ重要な役割を担います。
貧血になると、身体の酸素が少なくなるため、めまいや息切れ、立ちくらみ、頭痛、ふらつき、胸痛、動悸、疲労などの症状がみられるケースがあります。
貧血と診断されるのは、ヘモグロビン値(血色素量)が、成人男性13g/dL未満、成人女性12g/dL未満です。
がんの場合、治療の影響で貧血を起こすほか、病巣からの出血が見られることがあります。ここでは、貧血の原因について紹介します。
がんが発生した部位からの出血がみられたり、がん細胞が骨髄へ入り込んだりすると出血がみられたりすることがあります。
がん治療による副作用で食事量が低下することがあり、赤血球の材料となるたんぱく質やビタミン、鉄分が不足して貧血を起こすことがあります。
胃がんで手術を受けると、胃の本来の機能であるビタミンB12や鉄の吸収がされにくくなります。そのような状態になると、赤血球やヘモグロビンを生成するための栄養が不足し、貧血になる方もいます。
胃全摘をした方は、貧血を起こす可能性が高くなるほか、胃の切除後数年してから見られる可能性があるため注意が必要です。
上記の他には、薬物療法や放射線治療で骨髄抑制が起きたり、溶血(※2)が生じたりして貧血になるケースがあります。
(※2)溶血とは、血中の赤血球が何らかの原因で壊れて、赤血球中に含有されているヘモグロビンが流れ出てしまうこと。
がんによる貧血は、さまざまなことが原因となっているため、それらを究明して治療を行います。ここでは、貧血の治療について説明します。
ふらついたりめまいが起きたりした場合、その場にしゃがみ込んで、周囲に助けを求めることが重要です。貧血の対処法をチェックしてみましょう。
めまいやふらつきなどの貧血症状が見られた場合、転倒しないように、その場でしゃがみ込み、落ち着くまで休憩しましょう。 また、症状が落ち着いた後はゆっくり立ち上がるようにして、手すりを使ったり、安全な道を利用したりするなど、危険が少ない場所まで移動するようにしてください。
上記の他には、フラつきやめまいが起きた場合は、家族や知人のサポートを受けるようにしましょう。
がんによる貧血は、急激に貧血が進行した場合に症状が見られることがあります。
そのため、自分の血液検査のデータ(ヘモグロビン)を把握しておき、貧血の前ぶれがみられた際には、こまめな休憩を心がけるなど、貧血症状が起こりにくいように工夫しましょう。
バランスのよい食事を心がけるのはもちろん、ヘモグロビンの材料であるたんぱく質や鉄分の含有量が多い食品を意識的に摂取しましょう。たんぱく質は、肉や魚、卵、豆類、チーズ、ナッツに豊富に含まれています。
赤血球の生成に必要なビタミンB12(しじみやあさり、レバー、干し海苔)や葉酸(肉や枝豆、納豆、モロヘイヤなど)を含む食品、鉄の吸収をサポートするビタミンCを含む食品を一緒に摂取するのがおすすめです。
また、食事中や食事前後は、タンニンを多く含有するコーヒーや紅茶、濃い緑茶の摂取は控えようにしましょう。タンニンは鉄の吸収を阻害してしまうため、注意が必要です。
多くのケースで鉄剤が処方となりますが、食事内容にも注意が必要です。エネルギーやたんぱく質が不足しないように、主食(ご飯・パン・めん)や主菜(肉・魚・卵・豆類)、副菜(野菜料理・海藻料理)を適量摂取するよう心がけましょう。