がん治療の方法も多様化を迎えています。患者として治療法の選択肢が増えている点はありがたいことですが、信頼性の問題もあります。このページでは選択肢の一つとなる民間療法について、掘り下げてまとめています。
がん治療に民間療法は効果があるのかを考える前に、そもそも「民間治療とは」を理解する必要があります。
民間療法とは何かを正しく理解していなければ、何が民間療法で、何が民間療法ではないのかがわかりません。
民間療法は、厚生労働省では「相補代替療法」「補完代替療法」と呼称しています。また、近代西洋医学と組み合わせて生活の質を良くする手法として「統合医療」という言葉も登場していますが、これら3つを民間療法と定義しています。
民間療法の定義は「病気を治す」ではなく、病気の進行を鈍化させることで症状を和らげたり、副作用を軽減するなど、生活の質(QOL)を向上させることを目的としています。
つまり、民間療法は病気を治すためのものではなく、病気の治療をサポートすることが目的です。
しかしこれはあくまでも厚生労働省が定義した統合医療の定義であって、民間療法の定義ではありません。相補代替療法や補完代替療法の一部として扱われることもあるなど、その扱いは様々です。
我々の医療の根幹となっている西洋医学を補完する位置付けの医療です。国立補完代替医療センターでは通常医療とは定義できない医学・健康管理システムと位置付けています。
補完代替療法と西洋医療を組み合わせることで身体的・精神的にアプローチした治療とされています。
結論からお伝えすると、民間療法はがんそのものへの効果が医学的見地からは証明されていません。
いわゆる「標準治療」として定義されているがん治療とは異なるものと定義されていますので、標準治療の代わりに治療の主役に据えても、治療を期待することは難しいです。
がん治療の民間療法で多く実践されているのが健康食品やサプリメントの摂取とのことですが、がんそのものへの効果は科学的に証明されていません。
インターネット上や書籍には「がんが消える」「有名な教授と共同研究」「食事療法」と、がん患者を刺激する文言を広告に採用しているものもありますが、民間療法はがんそのものへの効果が証明されていません。
がん以外に関しては効果が期待できるものもあります。しかし、「がんが消える」民間療法はありません。「民間療法」という言葉からも分かるように、医学的根拠のあるものではないのです。
民間療法はがん治療への医学的根拠があるものではありません。
むしろ自己判断で民間療法を行ってしまった場合、がん治療の妨げとなってしまうケースもあります。
がん治療は栄養バランスの取れた食事生活も大切です。一方で、特定の栄養素だけを過剰に摂取したり、逆に糖質制限のような栄養制限も体に悪い影響を及ぼす可能性があります。
健康な方であればダイエット等の効果を得られる可能性がありますが、がん治療に関しては食事もまた、大切な要素なので自己判断で民間療法を行うと、正規の治療を妨げてしまいかねません。
例えばがん治療の効果をアピールして販売されていた健康食品の中に医薬品成分や似た成分が違法に添加されている場合、摂取することで体に何らかの負担を与えたり、健康被害を与える可能性があります。
さらに懸念されるのががん治療との組み合わせです。
薬には「併用禁忌」と呼ばれている、一緒に服用してはならない薬が設定されているものがあります。もしも自己判断で、がん治療で服用している薬の併用禁忌薬が含まれている栄養食品を摂取してしまった場合、治療効果に悪影響が出るだけではなく、健康被害を招く可能性もあります。
がん治療のために民間療法をと考えているのであれば、知っておくべき点がいくつかあります。
民間療法を考えていることをがん治療の担当医に必ず相談しましょう。
なぜならがん治療は患者の体調すべてを踏まえて考えられているものです。民間療法を行っても良いのかはもちろんですが、受けたいと考えている民間療法とがん治療の併用は問題ないのかなど、医師の知見を必ず確認しておく必要があります。
民間療法はがん治療の医学的根拠はありません。しかし「だからダメ」だと言い切れるものではありません。
冒頭でもお伝えしましたが、治療効果を期待するのではなく生活の質を向上させるためのもので、いわばがん治療のサポート的な位置付けに据えるものです。「がんを治す」ではなく、がん治療のデメリットをカバーするといった考えが大切です。
興味のある民間療法に関しては、徹底的に情報を集めましょう。
良い面だけではなくリスクやデメリットも含めての情報収集が大切です。
がん治療でさえ様々なデメリットがあるのです。
メリットだけしか存在しない民間療法は、怪しいと思った方が良いでしょう。
そもそも民間療法は治療を目的としたものではなく、生活の質を向上させるためのものです。
特にがん治療はがんだけではなく、身体全体、ひいては生活環境等まで含めて考慮しなければならない物なので、自己判断で民間療法にチャレンジするのではなく、担当医に相談してからにしましょう。
がん患者さんやそのご家族にとって、症状の改善が見込めるのであれば何でも試してみたい、と思うのは当然のことでしょう。ですので、治療に民間療法を取り入れたいとお考えの方も、少なくないと思います。
ですが間違えてはならないのが、民間療法は医療機関での治療とは異なり、がんを治療するものではなく、あくまでも生活の質を向上させるものだという事実です。
ただ、患者さんのQOL向上は、治療においてメリットをもたらす可能性も。ですので妄信せず、患者さんが安全に治療を続けられるサポートとして、医師と相談してから取り入れていくのが良いようです。
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