頭頸部(とうけいぶ)とは、頭蓋底部から下で鎖骨より上のこと。わかりやすく言えば、目の下から首までの範囲です。
頭頸部に内包される副鼻腔、口腔、咽頭・喉頭(のど)、甲状腺、唾液腺などの部位に生じたがん(悪性腫瘍)の総称を「頭頸部がん」と呼びます。
頭頸部には様々な器官が集まっているため、がんの種類も比較的多いのが特徴です。発生した部位でがんの性質や症状、発生原因など様々な要素が異なるため、治療法なども違ってきます。
「咽頭がん」とはのどにできるがんを指します。咽頭はおよそ鼻から顎までの範囲にあり、部位によって「上咽頭がん」「中咽頭がん」「下咽頭がん」という3種類のがんに分けられます。
特徴がそれぞれ異なり、発症の男女比が大きく異なるものや、ウイルス感染を原因とするものもあります。
上咽頭とは、鼻咽腔(鼻と咽頭との境界部分)にあるリンパ組織を指します。上咽頭がんの主な症状として、耳閉感や難治性中耳炎、鼻血、鼻閉(鼻づまり)などが挙げられます。
がんが進行すると、目や顔面に症状が広がってしまう恐れもあり、視力低下や感覚障害、痛みなどの脳神経症状を引き起こすケースもあります。
発症原因は様々ですが、特に唾液などに混じる「EBウイルス」との関連性が強く、若年層にもみられるがんの一つです。
中咽頭とは、咽頭の”管”の中間部分であり、主に口を開けた時に見える奥部分(口蓋や舌根など)を指します。
この部位に悪性腫瘍が生じると、咽頭の違和感や痛みや、咽頭痛、血痰(けったん)、リンパ節の腫れ・しこり等の症状が現れます。
がんの発生原因として「ヒトパピローマウイルス(HPV)」との関連が指摘されており、上咽頭がんと同じく若年層で増加傾向にあります。
下咽頭とは、鼻・口からの呼吸で取り込まれた空気や、口から摂取した飲食物の通り道になる部分です。
がんの症状には、咽頭の違和感や咽頭痛、嗄声(声枯れ)、血痰(血混じの痰)などが挙げられます。がんの進行具合によっては、嚥下障害や呼吸困難など生活に関わる症状が出る恐れも。
中年期の男性に多いがんですが、「徹欠乏症貧血」の女性にもみられる症例もあります。
喉頭とは、俗称で言う所の「喉仏」を指します。呼吸で取り込んだ空気を気管へ、飲食物を食道へ―と振り分けるための器官で、声帯を振動させて声を出す働きも持ちます。
がんの症例として、嗄声や嚥下時の違和感・異物感のほか、血痰、リンパ節の腫れ・しこり等が挙げられます。
その名の通り舌にできる悪性腫瘍を指し、「口腔がん」の一つに分類されます。
原因としては、喫煙や飲酒のほか、虫歯や不適合義歯による慢性刺激や、口腔内の不衛生などが挙げられます。
初期症状として口腔内の異物感・痛みやしこりなどが現れ始め、徐々に瘍(かいよう)、出血、嚥下困難などの重い症状に繋がります。
上顎洞とは、鼻腔の外下方に位置する空洞です。
喫煙や粘膜の炎症を起因とし、片方の鼻詰まり・鼻血・鼻水や、目やに、歯茎の腫れ・痛みなどが現れます。がんの症状としては乏しく、自覚症状もないことから特に発見されにくい傾向にあります。
耳下腺とは、唾液を産生する「大唾液腺」と呼ばれる器官の1つで、耳下部に位置しています。
器官には「顔面神経」という、顔の筋肉を動かす神経が通っています。そのため、耳下腺にがんが発生すると顔面(表情)の動きが悪くなったり、皮膚の発赤・痛みなどを引き起こすことがあります。
甲状腺とは、喉頭の下にある縦横4~5㎝の臓器のことです。甲状腺にできるがんは、「甲状腺乳頭がん」「甲状腺濾胞がん」など、複数の種類に分けられます。
特に女性に多いがんで、発症の原因は明確になっていません。初期症状・自覚症状も乏しいため発見が難しく、細胞に異常が現れる「未分化がん」の場合は亡くなるケースもあります。
先述したように、頭頸部がんの症状は発生部位によって異なります。
特に多いのが、長年の喫煙・飲酒を原因とする「口腔がん」や「下咽頭がん」、「咽頭がん」など。
症状としては喉の違和感・異物感、口内の痛み、首のリンパ節の腫れ・しこりなどが挙げられます。
頭頸部がんの殆どは初期症状が少なく、「がん症状」としての特徴に乏しいため見逃されやすく、進行期の状態で発覚するケースが多いと言われています。
頭頸部がんの原因は様々ですが、主に喫煙・飲酒の頻度が高い人や、口腔内の衛生状態が悪い人に多いです。また、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」や「EBウイルス」など、粘液に潜むウイルスを原因とするタイプも存在します。
一般的に、50~60代辺りの中高年の男性に多いがんですが、上咽頭がんや下咽頭がんの一部など、女性が多い傾向のあるものもあります。
ただし、これらはあくまでも「こういった人に多い傾向がある」というケースであり、必ず発生すると断定できるものではありません。
節酒・禁煙や口腔内の衛生管理(歯磨き・うがい)など、習慣の改善が発症のリスクを抑えることに繋がります。
頭頚部には様々な器官が集まっているためがんの種類も多く、有効な治療法などもそれぞれ違ってきますが、高精度放射線治療装置のトモセラピーによる放射線治療は、種類の多い頭頚部がんの治療においても高い効果が期待できる治療法の一つとされています。
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